介護サービスはだれのためにあるのでしょうか?
「いつまで預かってもらえますか?」これは、私が介護老人保健施設、介護療養型医療施設でソーシャルワーカーとして働いていた1990年代に、ご家族から一番多く受けた質問です。
当時は、介護保険制度導入前であり、行政がサービスの利用者、内容、提供者をすべて決める「措置」の時代でした。そこには、利用者と家族に主導権はなく、「利用させてもらっている」という気持ちで、「滞在できる期間」をいつも気にしなければならない、利用者と家族の姿がありました。
しかし、2000年に介護保険制度が始まり、利用者が主導権をもてるようになると、自分でサービスの内容を選ぶことができるようになりました。また、たくさんの民間企業が介護業界に参入するようになり、その結果、サービスの種類や内容も充実し、利用者にとっては選択の幅が広がりました。そして、今まで福祉サービスを提供していた事業者の意識も向上し、サービス業の視点も芽生え、利用者の立場からみると、満足度も随分向上してきました。
安心できる「ついのすみか」は見つかるのでしょうか?
では、介護が必要になった時には、利用者は本当に希望に合った最適なサービスを選ぶことができるようになったのでしょうか? また、自宅での暮らしが困難になった時には、安心して暮らすことができる「ついのすみか」を見つけることができるようになったのでしょうか? 例えば、サービスの一つとして代表的な介護施設を取り上げてみましょう。終身介護施設である「特別養護老人ホーム」は、入所希望者が多く、入所までに2~3年は待たなければならない状態です。また、介護度の高い人が優先されるため、軽度の要介護者はなかなか入所することができないのが実情です。
また、機能訓練等を行う「介護老人保健施設」については、自宅に戻ることを前提としている施設ですので、長期間滞在することはできず、落ち着いて暮らす施設とは言えないでしょう。そして、医療サービスが充実している「介護療養型医療施設」についても、長期間生活するには最適な場所とは言えません。現在38万床ありますが、2012年3月までに15万床まで削減される予定ですので、今後ますます入所が困難になるのは間違いありません。
有料老人ホームは、ベストな「ついのすみか」になるのでしょうか?
その結果として、有料老人ホームが、「ついのすみか」として近年注目を集め始めています。その数は年々増え続け、今では全国に約4,000ヶ所以上が設置され、とても身近な存在となってきました。その一方で、あまりに多くの情報が溢れすぎていて、自分や家族に合った最適なホームを探すことがとても困難になってきました。また、最近では無事入居できたとしても、入居した後に問題が発生するケースも目立ち始めました。例えば、2007年に訪問介護最大手のコムスンが不正請求を起こし、介護業界から退場を命じられ、コムスンが運営していた有料老人ホームは他の会社に買収されてしまいました。
その結果、入居者は契約内容の変更やサービス内容の削減などについても心配しなくてはならなくなりました。このように、廃業、事業者変更したホーム運営会社は、2006年からの3年間で450以上にも上り、入居後の生活に関しての不安も広がってきました。せっかく時間をかけて情報収集をしたとしても、このようなトラブルが後を絶たないため、自分に合った最適な老人ホームを選ぶことはますます難しくなっています。
老人ホーム選びで失敗しないためのポイントとは?
私は、約15年間、医療・介護分野でソーシャルワーカーとして働き、また有料老人ホームの運営にも携わり、70~80代のご本人とそのご家族から、介護施設の入居に関する相談を5,000件以上も受けてきました。その中には、ご家族が施設選びに関してすでに失敗されていたケースもたくさん見受けられました。特に、有料老人ホーム選びにおいては、情報収集、資金計画、施設見学などの準備をしっかりとすることが大切なのですが、数多くの事例を見聞きするうちに、老人ホーム選びに失敗しないためには、絶対見落としてはいけない重要なポイントがあることに気づきました。
入居を検討されるご家族の事情は様々ですが、入居されるご本人の心情はよく似たものでした。誰もが皆老人ホームへの入居に強い不安を抱いているにもかかわらず、親としての立場から「子供にだけは迷惑をかけたくない」という思いを強く持たれていたのです。その思いからホームへの入居を考えるようになった70~80代の親たちがとても多いのです。
そして、介護施設選びが失敗してしまうか、満足できるものになるのかは、情報収集、資金計画、施設見学などの十分な準備にかかってくるのですが、それ以上に大切なことは実は親子のコミュニケーションであることを発見しました。しかし、とても多くの家族が親子間で十分な話し合いをしないまま、必要な情報収集や、入居後のこともしっかりと計画しないまま、入居を決めてしまうため、本人もその家族も結果的に不幸な選択をしてしまうケースは、実はとても多いのです。
ザ シニア コンシェルジュは「安心と幸せ」をお届けします
そこで、この問題を解決するために、介護に関する相談と老人ホームの正しい選び方などを1ヶ所ですべてまとめて相談できるような便利な場所を作りたいと思うようになりました。ご本人とご家族の間に入って、双方の要望や本音をしっかりと聞いた上で、皆にとって最高の結果となるような老人ホーム選びをサポートできないかと思うようになり、この事業を始めました。
この事業は入居までをサポートするだけではなく、ご本人が老人ホームに入居した後も安心して暮らせるように、入居後の生活に関しても定期的に相談できる、しっかりとしたアフターフォローまでを提供するものです。そして、最適な老人ホーム選びと入居後のサポートを通じて、ご本人とご家族が幸せを感じることができるようにしたいと思います。
老人ホーム選びは、今までお世話になった親に恩返しすることができる絶好の機会です。
また、親の現状の問題は、私たち子供の未来の問題でもあります。今一度、真剣に向き合ってみませんか? そうすれば、今まで見えてこなかった大切な何かがきっと見つかります。介護に向き合い、家族に向き合うことで、誰もが安心して年を重ねることができる社会を作っていければ、こんなに素晴らしいことはないと思います。是非皆様、ご一緒に本当の幸せについてお話できることを心より楽しみにしています。