コラム

失敗に学ぶ老人ホームの選択例

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親子、家族間で納得できる老人ホームを選ぶためには、失敗したケースから学ぶことが近道です。失敗の原因を大きく分けると、3つの不足があげられます。
1つ目は、情報不足
2つ目は、コミュニケーション不足
3つ目は、資金計画不足

【ケース1 情報不足が原因のケース】

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70代後半の女性が、情報不足が原因で後悔した事例をご紹介します。彼女は3年前に老人ホームに入居したのですが、そのホームが倒産。代わりの運営会社が決まりホッとしたのも束の間、「運営方針やサービス内容までも変わってしまうのではないか?」と不安を感じるようになったそうです。そこで、「新しい老人ホームを探した方がいいのではないか?」と考え、相談に来られました。

私が経過を聞いたのち、「この老人ホームへの入居を決めた理由は何ですか?」と尋ねると、彼女は「老人ホームは75歳までに入居しないと、友人ができない。入居するならば、75歳までにした方がいいと、ある老人ホームの特集記事を読んで気になってしまって。その時すでに75歳になっていたので、焦っていたのです」と返答されました。

また、この老人ホームの担当者が、「元気なうちに入っておかないと後で苦労することになりますよ」と言ったことも彼女の背中を押したそうです。1000万円以上の入居一時金が必要なホームだったため、自宅を処分して入居したそうです。

「入居を決める前に、老人ホームについてよく調べましたか?」と尋ねると、「数件のパンフレットを取り寄せたのですが、読めば読むほどわからなくなりました。息子は海外暮らしなので、相談もできず一人で決めてしまいました」と。

希望を聞き調べた結果、彼女の条件に合う老人ホームを見つけることができました。しかし、月々の費用が高くなってしまうため彼女は断念することにしました。彼女曰く、「もし3年前だったら、このホームに入ることができたでしょう。老人ホームは終の棲家になるのですから、しっかりと情報を集めて調べないといけませんね。また、息子に心配をかけたくなかったので、すべて一人でやらなければという気負いもありました。信頼できる第三者に相談していれば、こんな後悔はしなくて良かったのでしょう。もう時すでに遅しですけれど」と。

【ケース2 コミュニケーション不足が原因のケース】

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次に、50代の娘さんが、一人暮らしの母親のことを心配して老人ホームへの入居を勧めたケースです。彼女の母親は外出時には杖が必要になり、手助けが必要な時はご近所の友人にお願いしていますが、だんだんと一人で生活することが困難になり始めていました。

そこで、一人暮らしの自由さを失わず、家庭的な雰囲気も感じられる老人ホームであれば、彼女の母親も気に入るだろうと考えて、部屋は個室で、食事・談笑は共同リビング(少人数グループ)で過ごすグループケア形式の老人ホームへの入居を決めました。

彼女の母親は、社交的な性格でホーム内の友人も増えて、最初の数か月は楽しい日々を過ごしていました。しかし、大きな悩みも持ち始めていました。それは、同じグループの中にわがままな女王様タイプの女性がいて、1日4回 朝食、昼食、おやつ、夕食を彼女と同じテーブルでとることが苦痛になってきました。とうとう彼女の顔をみることも嫌になり、自分の部屋に食事を運ぶことが増えてきました。心配した老人ホームのスタッフが娘さんに連絡をとり、三者間で相談することにしました。また、ホーム側もスタッフミーティングを開き解決策を提案したのですが、最終的には彼女の母親は退去という選択をしました。

娘さんは、「母親に合っていると思える、老人ホームを選んだつもりなのです。でも思い返せば、母親としっかりと話し合わず、最後は私が決めていました。一人暮らしに不安を感じていたのは、母親ではなく私だったのかもしれません。今後もし、老人ホームが必要になった時には、今度は母親の気持ちを受けとめ理解することを第一に考えるようにします。そして、二人が納得できるまでしっかりと話し合って決めます」と話されていました。

【ケース3 資金計画不足が原因のケース】

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最後は、資金計画が甘かったため、兄弟間でトラブルになったケースです。認知症の母親のために、3人の息子さんが話し合い、老人ホームへの入居を決めました。老人ホームとの契約に際して、長男が金銭面の責任を負う身元引受人となり、ホームとの連絡窓口は三男が担当することになりました。

ところが、母親がホームに入居すると、何度か肺炎を起こすようになり、長期間の入院が必要となりました。入院に際して、「部屋はそのままにしておかれますか? それとも、退居の手続きをされますか?」とホーム側から確認が入りました。入院中も老人ホームの部屋をキープするためには、維持費(部屋代、管理費など)がかかります(各老人ホームよってかかる費用と部屋を押さえておける期間は違いますので、確認が必要となります)。

重要事項説明書にはその旨の記載があり、契約時にも説明を受けていたのですが、息子さんたちにとっては、想定外の出来事でした。「何度か入院することもあるだろうから、このままではお金が続かないだろう。そうならないために、今のホームよりも安いところへ転居させよう」と提案する長男と、「このホームにいると、お母さんはとても落ち着いている。だからここで過ごさせてあげよう。お金が足りなくなったら、お母さん本人の資産を処分すればいいことだ」と主張する三男の間で意見が分かれました。

その後、対処法を巡って長男と三男の仲は険悪になり、母親の財産管理問題にまで発展し家庭裁判所で争う事になりました。毎週母親の様子を見に来ていた三男は「認知症が進んできたので、母親が落ち着いて過ごせる老人ホームを第一条件に探していました。経済的なことも、月々の費用や有料サービスなどを計算して大丈夫だと判断しました。でも、見落としていたことがあったのですから、計画性が弱いと言わざるをえません。あと何年この状況が続くのかと心配する兄の言い分も理解できないわけではないのです。事前にあらゆる状況を想定した上で、必要となる金額をきっちりと計算しておくべきでしたし、二人の兄と母親の財産分与についても話し合っておけば、こんな争いも起きなかったでしょう。
契約するまでに、不測の事態も加味してきちんと資金計画を立てなればいけませんね」と言われていました。

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